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Spinoza1632-77

スピノザ

スコトゥスを批判的に受け継いで、存在の一義性の積極性を主張し、知性と意志が一致するという全領域にわたる完全な哲学の大系を作り上げた。


「人知の範囲について」『知性改造論』『デカルトの哲学原理』エチカ


エチカ

神の本質と存在は一致する。アナロジー批判、つまり神は卓越しない。神は絶対であり、相対ではない、つまり神は超越しない。神即自然。存在することは能力、力である。神の力はその本姓によって必然であり、自由であるが、自由な意志ではない。

「知性改善論」畠中尚志訳、岩波文庫、

「真の観念(実際我々は真の観念を有するから)はその対象と異なる或るものである。なぜなら円と円の観念とは別のものであるから。というのは、円の観念は円のように円周と中心を有する或るものではないからである。同様にまた、身体の観念は身体そのものではない。そして観念がその対象と異なった或るものであるからには、それはまた、それ自体、理解され得る或るものであろう。言い換えれば、観念はその形相的本質(essentia formalis)という方面から見れば、他の想念的本質(essentia objectiva)[観念]の対象たり得るのである。そして更にこの別な想念的本質はまた、それ自体で見れば、実在的な且つ理解され得る或るものであろう。このようにして無限に進む。例えばペテロは実在的な或るものである。ところが真の観念はペテロの想念的本質[想われたる本質]であって、それ自体実在的な、且つペテロそのものとは全く異なる或るものである。このようにしてペテロの観念は、自らの特殊的な本質を持つ実在的な或るものであるから、それはまた理解され得る或るものであろう。言い換えれば、ペテロの想念は、それが形相的に有する一切を自らの中に想念的に有する或る他の観念の対象となるであろう。そして更に、このペテロの観念の観念が、また同様に、他の観念の対象たり得る自らの本質を持つ。このようにして無限に進む。これは誰でも実験出来ることである。すなわち、人はペテロが何であるかを知っていること、又それを知っていることを知っていること、又更にそれを知っていることを知っているということを知っていること等々に気づくのである。これからして確かなことは、ペテロの本質を理解するためにはペテロの観念そのものを理解する必要がないこと、ましてペテロの観念の観念を理解する必要はなおさらないということである。これは私が、知るためには知っていることを知る必要がなく、まして知っていることを知っているということを知る必要はなお更ないと言うと同じであって、それはあたかも三角形の本質の理解のために円の本質を理解する必要がないのと変らない。むしろこれらの観念における事情は逆である。なぜなら、私が知っていることを知るためには、必然的にまず知らなければならないのであるから。これからして確実性[確知]とは想念的本質そのもの以外の何ものでもないということ、言い換えれば形相的本質を感受する様式の中にこそ確実性そのものは存するということが明らかである。」(30〜32ページ)

「我々の終局目的のためには、既に述べたように、事物が全くその本質のみによって概念されるか、それともさの最も近い原因によって概念されるかが必要である。すなわち、もし事物がそれ自体で存在しているなら、あるいは世に言う自己原因(causa sui)であるなら、それは全くその本質のみによって理解されなければならないし、これに反してもし事物がそれ自体で存在せず、存在のために原因を要するなら、それはその最も近い原因によって理解されなければならないのである。なぜなら、実際のところ、結果を認識するということは、原因についてのより完全な認識を得ることにほかならないからである。だから我々は、事物の探究にたずさわる限り、決して抽象的概念から結論を下してはならない。そして単に知性の中にのみあるものを、実在するものと混同することのないよう十二分に用心しなければならない。むしろ最上の結論は、或る特殊的肯定的本質(essentia particularis affirmativa)から、すなわち、真実且つ正当な定義から引き出されるべきであろう。なぜなら、単に普遍的公理のみからは知性は個物へと降下することが出来ないからである。実際、公理は無限の範囲にまで及んでいて、知性を、或る個物を考察することに対し、他の個物を考察することに対してより多く規定するということはないから。それ故に何ごとかを発見するための正しい道は、或る与えられた定義からもろもろの思想を形成してゆくことにある。このことは、我々が物をよりよく定義すればするだけ首尾よく且つ容易に進行する。」
 

「神学・政治論」第16章
「自然状態は本性上並びに時間上宗教に先立つのである。事実何びとも、自分が神に服従すべく義務づけられていることを自然的には知らない。否、人はいかなる理性に依ってもかかる認識に到達しない。ただ徴證に依って確かめられた啓示に依ってのみかかる認識を得ることが出来るのである。故に啓示以前には何びとも神の法に拘束されない。彼はそれを全く知り得ないのであるから。だから我々は自然状態を宗教状態と決して混同してはならぬのであり、むしろ自然状態は宗教と律法を離れて、ーー従って又罪と不法を離れて考えられねばならぬ。これは我々が自らやったところであり、又パウロを引いて確證したところである。我々が自然状態を啓示された神の法に先立つもの・それと関係なしにあるものと考えるのは、人がそれを自然的には知り得ないという故にばかりではなく、すべての人間が依って以て生れる自由の故にでもある。実際若し人間が自然的に神の法に拘束されているとしたら、或は神の法が自然的に法であるとしたら、神が人間と契約を結び・人間を約束と誓いに依って義務づけるということは余計なことであった。これを以て見れば、神の法は人間が殊別の契約に依ってすべての点に於て神に服従すべく約束した時に始まったものと確認せねばならぬのであり、人間はこれに依っていわば自己の自然的自由を放棄し・自己の権利を神へ委譲したのである。恰も国家状態に於てそれが行われるように。」(同書183〜4ページ)
 

テキスト

『世界の名著30 スピノザ ライプニッツ』 下村寅太郎責任編集、中央公論社、1980

Charles Appuhn, ETHIQUE, Flammarion, 1997

ETHICA (Latin Text)

『エティカ』『知性改善論』主要書簡のラテン語版テクスト (Rudolf W. Meijer 個人サイト)
http://home.planetinternet.be/~pin86315/spinoza/index.html

Ethicaラテン語版定理集(Bibliotheca Augustana)
http://www.fh-augsburg.de/~harsch/Spinoza/spi_et01.html

On the Improvement of the Understanding

A THEOLOGICO-POLITICAL TREATISE

参考文献

●入門書

上野修『スピノザの世界―神あるいは自然』講談社現代新書、2005

工藤喜作『人と思想58 スピノザ』清水書院(「人と思想」シリーズ)1980

アラン『スピノザに楢いて』

Roger Scruton, Spinoza: A Very Short Introduction, Oxford University Press, 2002

Diane Steinberg , On Spinoza, Wadsworth Philosophers Series, Wadsworth Publishing, 2000

 ●概説書・読解書

工藤喜作『スピノザ』(人類の知的遺産)講談社、

福居 純、『スピノザ『エチカ』の研究』、知泉書館、2002

ドゥルーズ『スピノザ 実践の哲学』訳、平凡社ライブラリー、2002

G. LLOYD, Routledge Philosophy GuideBook to Spinoza and The Ethics, Routledge, 1996

Jonathan Bennett, A study of Spinoza's Ethics,

エドウィン・カーリー『スピノザ『エチカ』を読む』開龍美・福田喜一郎訳、文化書房博文社、1993

Harold H. Joachim, A study of the Ethics of Spinoza,

●研究書

田島 正樹『スピノザという暗号』青弓社、2001

マシュレ『ヘーゲルかスピノザか』新評論

ドゥルーズ『スピノザと表現の問題』

上野修『精神の眼は論証そのもの : デカルト、ホッブズ、スピノザ』学樹書院, 1999

言葉と悲劇 / 柄谷行人著. -- 第三文明社, 1989

スピノザの政治思想 : デモクラシーのもうひとつの可能性 / 柴田寿子著. 未来社, 2000

スピノザの政治哲学 : 『エティカ』読解をとおして / 飯島昇藏著. -- 早稲田大学出版部, 1997. -- (政治思想研究叢書 ; 8)

政治思想における抵抗と統合 / 日本政治学会編. -- 岩波書店, 1963. -- (年報政治学 ; 1963年度)

デモクラシー論の先駆 : スピノザの政治理論 / 森尾忠憲著. -- 学文社, 1983

Henry ALLISION, Benedeict de Spinoza, New Haven, Yale UP, 1986

Studia Spinozana. - Alling : Walther & Walther , c1985

ALQUIE, Oeuvre philosophiques de Descartes, Paris, Garnier, 1963-73

DELEUZE, L'Île déserte et autres textes, Paris, Editions de Minuit, 2002.

L. S. FEUER, Spinoza and the rise of Liberalism, 1958

Martial GUEROULT, Etudes sur Descartes, Spinoza, Malebranche et Leibniz, G. Olms, 1970.  (Studien und Materialien zur Geschichte der Philosophie ; Bd. 5)

Martial GUEROULT, Spinoza. Aubier-Montaigne, 2 vols., 1969, 1974

Alexandre MATHERON. Individualite et relations interhumaines chez Spinoza, Paris, 1969

Alexandre MATHERON. Le Christ et le salut des ignorants chez Spinoza, Paris, Aubier, 1971 (Analyse et raisons ; 16)

Alexandre MATHERON. Individu et communaute chez Spinoza, Nouvelle ed. - Paris, Les Editions de Minuit, 1969, 1988. - (Le sens commun).

Antonio NEGRI, Spinoza subversif : variations (in)actuelles, traduction de Marilene Raiola et Francois Matheron. - Paris : Kime , c1994. - (Philosophie-epistemologie).

Antonio NEGRI, L'anomalie sauvage : puissance et pouvoir chez Spinoza, ; traduit de l'italien par Francois Matheron ; prefaces de Gilles Deleuze, Pierre Macherey et Alexandre Matheron ; : pbk. -- 1re ed. -- Presses universitaires de France, 1982.  (Pratiques theoriques)

H. A. WOLFSON, The philosophy of Spinoza, Meridian, 1961

Sylvain ZAC. La morale de Spinoza  Presses universitaires de France, 1959.  (Initiation philosophique ; 39)

Sylvain ZAC. L'idee de vie dans la philosophie de Spinoza - Presses univ. de France, 1963. (Bibliotheque de philosophie contemporaine)

Sylvain ZAC. Signification et valeur de l'interpretation de l'ecriture chez Spinoza, Presses universitaires de France, 1965

Sylvain ZAC. Spinoza et l'interpretation de l'ecriture,  Presses univ. de France, 1965.  (Bibliotheque de philosophie contemporaine)

Sylvain ZAC. Philosophie, theologie, politique dans l'oeuvre de Spinoza.  J. Vrin, 1979.  (Bibliotheque d'histoire de la philosophie)

Sylvain ZAC. Spinoza en Allemagne : Mendelssohn, Lessing et Jacobi, Meridiens Klincksieck, 1989. (Collection "Philosophie")

リンク

スピノザ協会スピノザ協会会報

村の広場(シュヴェーグラーの『西洋哲学史』から、スピノザ哲学の簡潔な解説を引用)

スピノザの生涯・思想・参考文献


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