Kant
カント

 カントは一見常識的な思考のなかに、驚くべき複雑な思考をつめこむことのできる哲学者としてほかに類がない。ゆえに、カントの哲学をその見かけだけで判断してはならない。たとえ彼の哲学が一見形而上学の破壊のように見えても、彼の意図は形而上学の新たな復興なのであり、彼の時空論が一見いかに常識的に見えようとも、けっしてそう見えるほど単純なことを言っているわけではないのである。
 メモ:感性の形式としての時空が根源的に獲得されるものだとすると、カテゴリーとその超越論的演繹はどうなっているのだろうか。経験とカテゴリー。理性の深淵。『判断力批判』における諸能力の発生について。


カントの著書

Kritik der reinen Vernunft, nach der ersten und zweiten Originalausgabe ; herausgegeben von Jens Timmermann ; mit einer Bibliographie von Heiner Klemme (Philosophische Bibliothek ; Bd. 505). Felix Meiner, 1998
→ ペーパーバックで手に入るものとしてはこれが最も綿密に編集されている。900ページある。

『純粋理性批判』(世界の大思想10)高峯一愚訳、河出書房、1965。(新装版世界の大思想15)、1974。
→ 定評ある翻訳で、未だにこれを愛好する研究者も多い。古本屋で意外と安く簡単に見つかる。最近、『ワイド版世界の大思想 第1期5 カント』としても再刊された。

『純粋理性批判』(上・中・下)原佑・渡辺二郎訳、平凡社ライブラリー、2005
→ 理想社版全集のものを補訂したもの。これで読んでもいい。

『カント全集4-6 純粋理性批判』(上・中 ・下)有福孝岳訳、岩波書店、2001-
→ 訳注・校訂注が充実していて、原文と対照させながら読むのに適している。繰り返し参照することになる上巻だけこれで買うというのもありだと思います。 下巻にはプロレゴメナも収録される予定。

Prolegomena zu einer jeden künftigen Metaphysik, die als Wissenschaft wird auftreten können,

『プロレゴーメナ・人倫の形而上学の基礎づけ』土岐 邦夫・野田又夫・観山雪陽訳、中央公論新社、
→ 『純粋理性批判』 の普及版である『プロレゴメナ』はこの訳と岩波文庫訳しか安く手にはいらない。中公バックスにはいっていたものの文庫化。

 Kritik der praktischen Vernunft.

『実践理性批判』宇都宮芳明訳、以文社
→ これも定評ある翻訳。

『カント全集7 実践理性批判・人倫の形而上学の基礎づけ』伊古田・坂部訳、岩波書店、2000
→ どちらにしても岩波文庫で読むのだけは避けなければならない。

Grundlegung zur Metaphysik der Sitten,

『道徳の形而上学の基礎づけ』宇都宮芳明訳、以文社、2004

Die Metaphysik der Sitten,

『カント全集11 人倫の形而上学』樽井正義, 池尾恭一訳、岩波書店、2002

野田又夫責任編集『世界の名著39 カント(プロレゴーメナ/土岐邦夫, 観山雪陽訳、人倫の形而上学の基礎づけ / 野田又夫訳、人倫の形而上学(法論) /加藤新平, 三島淑臣訳、人倫の形而上学(徳論) /森口美都男, 佐藤全弘訳)』中央公論社、1979
→ 中公バックス版に『人倫の形而上学』の全訳がはいている。最近でた岩波新全集版よりも安くて使い易い。

Die Religion innerhalb der Grenzen der bloßen Vernunft

『カント全集10 たんなる理性の限界内の宗教』北岡武司訳、岩波書店、2000

 Kritik der Urteilskraft,

『判断力批判』(上・下)宇都宮芳明訳、以文社、2004
→ これも定評ある翻訳。岩波全集版は牧野訳なので避けるが吉。

『カント全集8-9 判断力批判』牧野英二訳、岩波書店、1999-2000

『世界の大思想 カント (実践理性批判・判断力批判・永遠の平和のために)』(世界の大思想11)、河出書房、1969。(新装版世界の大思想16)、1974
→ 判断力批判の訳を含む。ワイド版として再刊されている。

『ワイド版世界の大思想 第1期6 カント』(実践理性批判 / 樫山欽四郎訳、判断力批判 / 坂田徳男訳、永遠の平和のために / 土岐邦夫訳)河出書房、2004

Metaphysische Anfangsgründe der Naturwissenschaft

『カント全集12 自然の形而上学』犬竹正幸訳、岩波書店、2000

Anthropologie in pragmatischer Hinsicht

『カント全集15 人間学』渋谷治美・高橋克也訳、岩波書店、

『カント全集18 諸学部の争い ; 遺稿集』角忍[ほか]訳、岩波書店、2002
→ 

『カント全集1-3 前批判期論集』大橋容一郎, 松山壽一訳』、岩波書店、
→  一巻は活力論など、二巻には「美と崇高の感情にかんする観察」、三巻には「視霊者の夢」「空間における方位の区別の第一根拠について」、「可感界と可想界の形式と原理」など重要な論文が入っている。

『カント全集13 批判期論集』谷田信一[ほか]訳、岩波書店、
→ 


入門書

石川『カントはこう考えた』

石川『カント入門』(ちくま新書 029) 1995

『カントを読む』

『カント『純粋理性批判』入門』(講談社選書メチエ 192)

バウムガルトナー『カント入門講義『純粋理性批判』読解のために 』(叢書・ウニベルシタス 428)

岩崎『カント』1958

山崎『カント』(世界の思想家11)1977

中島『カントの人間学』1997

ラクロア『カント』白水社、1971

坂部『カント』講談社、2001

ヘッフェ『イマヌエル・カント』1991

平田 俊博『柔らかなカント哲学』(哲学叢書) (2001/06) 晃洋書房

北岡 武司『カントと形而上学―物自体と自由をめぐって』SEKAISHISO SEMINAR (2001/06) 世界思想社

円谷裕二『近代哲学の射程―有限と無限のあいだ』放送大学教材、

牧野英二『カントを読む―ポストモダニズム以降の批判哲学』(岩波セミナーブックス) (2003/01) 岩波書店

熊野純彦『カント―世界の限界を経験することは可能か シリーズ・哲学のエッセンス』日本放送出版協会、2002
 

日本人による概説書・研究書

岩崎『カントとドイツ観念論』1951

矢島『カントの自由の概念』1965-1974

浜田『若きカントの思想形成』1967
→ 初期カント研究として本邦初であり、今だに基本文献のひとつ。

三渡『カント哲学研究』1974

坂部恵『理性の不安 カント哲学の生成と構造』1976
→ 画期的なカント研究書だった。『視霊者の夢』に注目した。

量『カントと形而上学の検証』1984

久保『カント研究』1987
→ 研究書でもあり、哲学書でもある。

有福『カントの超越論的主体性の哲学』1990

量『宗教哲学としてのカント哲学』1990

新田『カントと自由の問題』1993
→ 「超越論的自由」と「実践的自由」との関係をめぐる考察。

浜田『カント哲学の諸相』1994

中島義道『時間と自由(カント解釈の冒険)』晃洋書房、1994、講談社、1999

石川『カント 第三の思考 法廷モデルと無限判断』1996

牧野『遠近法主義の哲学 カントの共通感覚論と理性批判の間』1996

山口『カントにおける人間観の探求』1996
→ カントの全体像。コンパクトだが密度が高い。

量『批判哲学の形成と展開』1997

薮木栄夫『カントの方法 思惟の究極を求めて』法政大学出版局, 1997

宇都宮『カントと神 理性信仰・道徳・宗教』岩波書店、1998
→ 方法論の読み直しをもとに、カントの神と理性信仰の問題をとりあげる。

中島義道『空間と身体(カント解釈の冒険 続)』晃洋書房、2000

中島 義道『カントの時間論』岩波書店、2001

石崎 宏平『イエナの悲劇―カント、ゲーテ、シラーとフィヒテをめぐるドイツ哲学の旅』 (2001/06) 丸善

日本カント研究『カントと日本文化 日本カント研究 2』(2001/07) 理想社

森 禎徳『理念をめぐるカントの思惟』(2001/11) 文理閣

諸岡 道比古『人間における悪―カントとシェリングをめぐって』 (2001/11) 東北大学出版会

植村 恒一郎『自我の探究 現代カント研究』 (2001/11) 晃洋書房

円谷『経験と存在 カントの超越論的哲学の帰趨』東京大学出版会、2002
→ カントを手がかりに経験と世界とのかかわりについて考察した論攷。

宮地 たか『倫理と宗教の間―カントとキェルケゴールに関連して』 (2002/03) 渓水社

山本 博史『カント哲学の思惟構造―理性批判と批判理性』(2002/05) ナカニシヤ出版

日本カント協会『カントの目的論 』(日本カント研究 3)(2002/07) 理想社

筒井 文隆『ベルクソンとカントの社会論―人心覚醒から世界平和へ』(2002/09) 近代文芸社

余語 ルリ『根本的カント論―有の思想と弁証法』(2002/11) 信山社出版

新田 孝彦『カントと自由の問題』 (2002/12) 北海道大学図書刊行会

石浜 弘道『カント宗教思想の研究―神とアナロギア』(2002/11) 北樹出版

村上 嘉隆『カントの神と無神論』 (2003/02) 教育報道社

村山 保史『カントにおける認識主観の研究―超越論的主観の生成と構造』 (2003/02) 晃洋書房

日本カント協会『カント哲学と科学』(日本カント研究 4) (2003/07) 理想社

長倉 誠一『人間の美的関心考―シラーによるカント批判の帰趨』 (2003/09) 未知谷

黒積 俊夫『ドイツ観念論との対決―カント擁護のために』(2003/11) 九州大学出版会

湯浅 正彦『存在と自我 カント超越論的哲学からのメッセージ』(2003/12) 勁草書房

松山 寿一『若きカントの力学観 『活力測定考』を理解するために』(2004/03) 北樹出版

藤田 昇吾『カント哲学の特性』 (2004/03) 晃洋書房

柄谷 行人『トランスクリティーク -カントとマルクス』定本 柄谷行人集、 (2004/03/26) 岩波書店

高峯 一愚『断思断想 カント研究余滴』 (2004/04) 論創社

中島 義道『カントの自我論』(2004/04) 日本評論社

カント研究会『近代からの問いかけ 啓蒙と理性批判 現代カント研究』 (2004/05) 晃洋書房

千田 義光 講座 近・現代ドイツ哲学〈1〉カントとドイツ観念論』(2004/06) 理想社

内田 浩明 カントの自我論―理論理性と実践理性の連関』(2005/02) 京都大学学術出版会

南 剛『意志のかたち、希望のありか―カントとベンヤミンの近代』 (2005/04) 人文書院

『カントと二つの視点 「三批判書」を中心に』専修大学出版局、2005

太田 直道『カントの人間哲学―反省的判断論の構造と展開』晃洋書房、2005

松山壽一『ニュートンとカント 自然哲学における実証と思弁』晃洋書房、2006


邦訳された概説書・研究書

アラン『アラン、カントについて書く』(2003/11) 知泉書館

ハイデッガー『現象学の根本問題』
→ 

カッシーラー『カントの生涯と学説』1986
→ 

カッシーラー『認識問題2−2』

マルチン『カント 存在論および科学論』1962

ヤスパース『カント』1962

デューリング『カント哲学入門』1971

ハイデッガー『有についてのカントのテーゼ』1972

ドゥルーズ『カントの批判哲学』
→ カントにおける「諸能力の理説」についての数少ない研究書として貴重。刺激的。

アディッケス『カントと物自体』1974

カウエルバッハ『イマヌエル・カント』(1969)1977
→ドイツの代表的概説書

ゴルドマン『カントにおける人間学・共同体・世界』1977

S・ケルナー『カント』みすず書房、1977
→ 英米哲学の動向をふまえたカント概説書

ハイデッガー『物への問い カントの超越論的原則論に寄せて』1978

ヘンリッヒ『カント哲学の体系形成』1979

クローナー『ドイツ観念論の発展 1』
→ 

ハイムゼート『カント哲学の形成と形而上学的基礎』1981
→  

グリガ『カント その生涯と思想』1983

ヒンスケ『現代に挑むカント』1985

アーレント『カント政治哲学の講義』1987

プラース『カントの自然科学論』1992

フィロネンコ『カント研究』東海大学出版会、1993

ハンス・フェガー『カントとシラーにおける構想力』鳥谷部平四郎訳、大学教育出版、2002

モニク ダヴィド=メナール『普遍の構築―カント、サド、そしてラカン』せりか書房、2001

アレンカ ジュパンチッチ『リアルの倫理―カントとラカン』河出書房新社、2003

アルベルト シュヴァイツァー『カントの宗教哲学〈上〉』白水社、2004

U.P. ヤウヒ『性差についてのカントの見解』専修大学出版局、2004

ジェームズ ボーマン『カントと永遠平和―世界市民という理念について』未來社、2006


邦訳されていない研究書

Roger Daval, La métaphysique de Kant, Presses Universitaires de France, 1950

純粋理性批判の研究書

ハイデッガー『カントと形而上学の問題』(1929)2003

ハイデッガー『カントの純粋理性批判の現象学的解釈』1997

ハイムゼート『カント『純粋理性批判』注解』1・2、1999
→ 定評ある注解書。

岩崎『カント純粋理性批判の研究』1965
→ 注解書。基本文献のひとつ。

高橋『カントの弁証論』1969

浜田『カント倫理学の成立』1981

牧野『カント「純粋理性批判」の研究』1989

ストローソン『意味の限界 『純粋理性批判』論考』1987

Adorno, Kant's 'Critique of Pure Reason',

Sebastian Gardner, Routledge Philosophy GuideBook to Kant and The Critique of Pure Reason, 1998

山口修二『カント超越論的論理学の研究』 (2005/03) 溪水社
→ 「超越論的分析論」に焦点を絞った研究書

山根雄一郎『「根源的獲得」の哲学 : カント批判哲学への新視角』 東京大学出版会、2005
→ カントにおけるアプリオリの意味を「根源的獲得」という視点から解釈した革新的な研究。でもカテゴリー論がないのはなぜ?


実践理性批判の研究書

小倉『カントの倫理思想』1972
→ シェリングも注目したカントにおける「理性の深淵」の思考についての研究書

Allen Wood, Kant's ethical thought, Cambridge University Press, 1999

保呂 篤彦『カント道徳哲学研究序説―自由と道徳性』(2001/03) 晃洋書房

鳥谷部 平四郎『ある生き方―新しい解釈のないカント理解』 (2002/10) 大学教育出版

倉本香『道徳性の逆説―カントにおける最高善の可能性』西洋思想叢書、 (2004/04) 晃洋書房

滝浦 静雄 道徳の経験―カントからの離陸(2004/10) 南窓社

松井 富美男『カント倫理学の研究―義務論体系としての『道徳形而上学』の再解釈』(October 2005) 溪水社

 Andrew Reath, Routledge Philosophy Guidebook to Kant on Morals (Routledge Philosophy Guidebooks), 2006


判断力批判の研究書

高峯『カント 判断力批判注釈』1990

中村『カント「判断力批判」の研究』1995

, The Genesis of Kant's Critique of Judgement,

, Kant's Theory of Taste : A Reading of the Critique of Aesthetic Judgment,

ドゥギーほか『崇高とは何か』1999

門屋 秀一『カント第三批判と反省的主観性―美学と目的論の体系的統一のために』 (2001/09) 京都大学学術出版会

ティエリー『芸術の名において―デュシャン以後のカント/デュシャンによるカント』

佐藤 康邦『カント『判断力批判』と現代』岩波書店、2005

金田 千秋『カント美学の根本概念』中央公論美術出版、2005

 Robert Wicks, Routledge Philosophy Guidebook to Kant on Judgement (Routledge Philosophy Guidebooks), 2006