Francis Bacon(1561-1626)
フランシス・ベーコン

  ベーコンは形而上学において想像力が果たしている役割に着目し、それを「知性のイドラ」という思想に組み込んだ。彼の思想は反形而上学的思想の歴史的転換点をなしており、哲学思想の初の病理学者だった。
 彼が形而上学に与えた酷評は大陸合理主義によって要求された「知性の改善」よりもはるかに徹底的なものであり、彼は経験論の創始者として哲学の歴史に重要な位置を占める。 彼は形而上学的思考の代わりに科学的思考を賞賛し、その方法を帰納法によるものとした。

 ベーコンの技術思想は今日ではひとつの象徴となり、さまざまな批判があびせられている。しかしそうした批判はみな、人間にある種の自然、本来性を仮定し、そこから技術が人間を疎外すると考えている。しかし、ベーコンは「技術本来の空虚さ」を指摘しただけでなく、「人間本来の空虚さ」もまた考えていたのではないだろうか。また、科学(知性)と技術(実践)を対立するものではなく、相互に補完的なものと考えた点には彼の経験論的な思想が現れており、のちに両者を分割したカントとは本質的に対立している。


年表

1597『随想録』

1603『自然の解明への序説』

1605『学問の進歩』

1609『古人の知恵』

1620『大革新』

1623『学問の尊厳と進歩』

1927『森の森』

1927『ニュー・アトランティス』


著作

Francis Bacon : The Major Works, Oxford University Press
→ 最新の研究に基づいた注もついており、信頼できる版となっている。

『ベーコン 世界の名著25』(随筆集・学問の発達・ニューアトランティス)成田成寿訳、中央公論社、1979
→ もう絶版になっている。

『学問の進歩、ノヴム・オルガヌム、ニュー・アトランティス』(世界の大思想6 ベーコン)河出書房、
→ ノヴム・オルガヌムの二巻もはいっている。ほかの二作は岩波文庫でも読めるが……

『学問の進歩』服部英次郎ほか訳、岩波文庫、1974
→ 上の本から独立させたもの。

『ノヴム・オルガヌム』桂寿一訳、岩波文庫、1978(第一部のみ)
→ ラテン語原文の文体がにじみ出ている新訳。

『ニュー・アトランティス』川西進訳、岩波文庫、2003
→ なぜか新訳が出された科学者のユートピア物語。ローリーによるベーコン伝がついている。

The Instauratio Magna Part II: Novum Organum and Associated Texts (The Oxford Francis Bacon),

The Advancement of Learning (The Oxford Francis Bacon), 2000

Graham Rees, Michael Edwards, Philosophical Studies c.1611-c.1619 (The Oxford Francis Bacon), Oxford University Press, 1996

The Instauratio Magna: Last Writings (The Oxford Francis Bacon), 2000

The Essayes or Counsels, Civill and Morall (The Oxford Francis Bacon), 2000

伝記

M. Stutt, Francis Bacon, 1932


研究文献など

ファリントン『フランシス・ベイコン』

Rossi, Francis Bacon: Dalla Magia alla Scienza, 1957(パオロ・ロッシ『魔術から科学へ』)

パオロ・ロッシ『哲学者と機械』

石井『ベーコン』(人と思想)

坂本『ベーコン』(人類の知的遺産30)、講談社、1981

花田圭介『フランシス・ベーコン研究』(イギリス思想研究叢書 )御茶の水書房、1993

石井栄一『フランシス・ベーコンの哲学』東信堂 、1982、1995

木村俊道『顧問官の政治学―フランシス・ベイコンとルネサンス期イングランド』木鐸社、2003

Fisher, Francis Bacon, 1856

Lemmi, The Classic Deities in Bacon. A Study in Mythological Symbolism, 1933

Anderson, The philosophy of Francis Bacon, 1948

Schuhl, La pensee de Bacon, 1949

Wallace, Francis Bacon on Communication and Rhetoric, 1943

Wallace, Francis Bacon  on the Nature of Man: the faculties of man's soul: understanding, reason, imagination, memory, will, and appetite, University of Illinois Press, 1967

Howell, Logic and Rhetoric in England: 1500-1700, 1956

Jardine, Francis Bacon: Discvery and the Art of Discourse, 1974

Vickers, Francis Bacon and Renaissance Prose, 1968

Markku Peltonen, The Cambridge Companion to Bacon (Cambridge Companions to Philosophy), Cambridge University Press, 1996


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