基本図書


哲学用語事典

WIENER, Philip Paul, Dictionary of the history of ideas : studies of selected pivotal ideas, New York, Scribner, 1973-74.
フィリップ・P.ウィーナー 編『西洋思想大事典』全五巻、平凡社、1990.

ほかに類のない事典。 それぞれの観念ごとに思想史的な変遷などを解説してくれる。これほどしっかりしたこの種の思想史的事典はほかにない。哲学や思想関係を勉強する人 以外でも、かなり勉強になる。執筆陣もアメリカ人に偏っていなくて、英米哲学の偏狭さにとらわれてもいない。ジャン・ヴァールが「非合理主義」の項を書いており、彼を意識して書かれた「形而上学的想像力」の項などはすさまじく面白くて勉強になる。

Maryanne Cline Horowitz, New Dictionary of the History of Ideas, Charles Scribner's Sons, 2004

『観念の歴史』の新しいバージョンが登場しちゃいました。まったく新し い版で、写真なども豊富で、項目も新しくなっているみたい。なぜか神道やら、ポストモダニズムとか、レスポンシビリティとかとかとか。サールが Intentionality、酒井直樹がtranslation、スピヴァックが「ポストコロニアル理論と文学」の項を執筆している。

思想の科学研究会『哲学・論理用語辞典』三一書房、新装版、1995

ちょっと独特な哲学辞典で、「事典」でないからには、その用語の意味の解説が主となっている。哲学史をふまえた記述というよりかは、日常的な言葉でその概念の意味を解説しようとしている。哲学とはなにかを知りたい初学者には最適。

『事典 哲学の木』

上のものと似たようなコンセプトで作られたものだろう。この手のものは、執筆者によって出来がかなりマチマチだというのが欠陥か。哲学を専攻しない学生や、とくに哲学を勉強したことのない人にはこれがいいかもしれない。もちろん、ここで言われていることが代表的な見解であるわけでもないし、哲学を代表しているわけでもないということを頭に入れてほしいのだけども。

村治ほか編『哲学用語辞典』(新装版)東京堂出版、1999.

主にギリシア哲学研究の人が中心となって書かれた辞典。たとえば「アイオーン」などの項がある和製哲学辞典はこれだけだと思われる。 主要な用語についてはどの辞典よりも詳しい記述がある、というよりは、以降の辞典はこれを参考にして書いているんじゃないのってかんじ。概念を古典から しっかりと歴史的にその変遷も含め解説しているので、信頼でき、かつ思考を促す(ここが重要!)記述になっている。何より、「永遠回帰」の項などは執筆者のしっかりとした問題意識が感じ られて面白く、ただの教養にはおわらせない。日本人が執筆した一般的な哲学辞典のなかではもっともお勧め。コンパクトだしね。

子安宣邦・三島憲一・宮本久雄・佐々木力・野家啓一・末木文美士『岩波哲学・思想事典』岩波書店、1998.

しっかりした哲学事典で執筆者も豪華だが、はっきり言ってつまらない。何より哲学用語を決まり切ったものとして捉えていて、問いかけをもって書いていな い項が多い。日本の哲学研究の悪いところが凝縮された作りになっていて、 気分が悪いときに引くと吐き気がするほど。しかしまあ便利だし、最近の成果も反映されているので、平凡社のものよりはいい。 なお、東洋哲学にも西洋のと同じ程度に重点がおかれているのは貴重で、日常会話にブラフマーンとか取り入れてみたくなる?

Joachim Ritter, Karlfried Gründer, Gottfried Gabriel, Historisches Wörterbuch der Philosophie, Bd. 1 - Bd. 12, Vollig neubearbeitete Ausg. des "Worterbuchs der philosophischen Begriffe" von Rudolf Eisler, Wissenschaftliche Buchgesellschaft, Basel, Schwabe, 1971-2005.

数十年を費やしてついに完結した超大部の哲学辞典で、哲学辞典としては最も有名なもの。 全12巻。最新巻にあるWahrheitという項など、これだけで50ページ以上費やされているという、哲学好きには涙ものの事典。しかも、大きな用語には下位項目がある。客観的真実なら別にまた項を立てて記述されているという徹底ぶり。

André Jacob, Encyclopédie philosophique universelle, tome 2 : Les Notions philosophiques : dictionnaire, volume dirigé par Sylvain Auroux ; secrétaire scientifique, Jacques Deschamps ; conseiller scientifique, François Duchesneau, Presses Universitaires de France, 1998

 フランス語の哲学事典として新しく便利なもの。項目によってなんかマチマチな気もするけど……。用語の語源、使用例、変遷などなどで、執筆者にもよるけれど、大きな項目は小さな論文とも言える分量になっている。 以前は二巻本で出ていて、たいていの大学図書館にもそれで入っていると思うけれど、最近一巻本になった、A3に拡大コピーして読んでます。日本語ではこれだけ大きな事典がないので、ぜひとも外国語の事典を使いましょう。

Michel Blay (sous la direction de), Larousse grand dictionnaire de la philosophie, Paris, Larousse, CNRS Éditions, 2003

坂部恵・加藤尚武編『命題コレクション 哲学』、筑摩書房、

古今の哲学者51人の最も重要な術語に詳細な解説を加えたもの。哲学史の勉強にもなって一石二鳥かも。

里見軍之・飛田就一編『哲学入門 哲学基本事典』、富士書店、1994.

Encyclopedia Britannica 2005, Encyclopedia Britannica Inc, 2004

イギリスの上流階級のうちに行くと必ずあると言われるブリタニカ。新しい版にはちゃんと最近の知見が盛り込まれている。哲学事典として基本的なことを押さ えておくのには十分だし(かつてフッサールなんかもこれに執筆したことがある)、哲学を学ぶためにも必要な科学的な知識を押さえておくにもよい。英語版な らDVDで25ドルです(amazon.comで 売っています)。これはかなり安いのではないでしょうか。

哲学者事典

子安宣邦・三島憲一・宮本久雄・佐々木力・野家啓一・末木文美士『岩波哲学・思想事典』岩波書店、1998.

この事典はいろいろ兼ねていて、哲学者事典も兼ねている。これは、パリから出ているEncyclopédie philosophique universelleだと別々の巻になっている内容なんだよね。有名な哲学者についてはまあまあ詳しい解説が、それほど有名ではない哲学者については一行程度の解説が載っている。有名でない哲学者の項はない。

小林康夫・坂部恵・松永澄夫『フランス哲学・思想事典』弘文堂、1999

フランス関連の哲学者事典として日本で出ているものではこれが一番詳しい。とくに近代あたりの哲学者の概要は、これで一番入手しやすいだろう。

André Jacob, Encyclopédie philosophique universelle, tome 1 : L'Univers philosophique, Presses Universitaires de France, 1998

Sylvain Auroux, Yvonne Weil, Dictionnaire des auteurs et des thèmes de la philosophie, Éd. rev. et augm. - [Paris] : Hachette, 1991

哲学書事典

子安宣邦・三島憲一・宮本久雄・佐々木力・野家啓一・末木文美士『岩波哲学・思想事典』岩波書店、1998.

André Jacob, Encyclopédie philosophique universelle, tome 3 : Les Œuvres philosophiques, Presses Universitaires de France, 1992

Robert Raoul Laffont et Valentino Silvio Bompiani, Dictionnaire des œuvres de tous les temps et de tous les pays : littérature, philosophie, musique, sciences, 1ère éd. - Paris : R. Laffont , 1980

Denis Huisman, Dictionnaire des mille œuvres clés de la philosophie,  [Paris] : Nathan , c1993


哲学史・思想史・精神史

André Jacob, Encyclopédie philosophique universelle, tome 4 : Le discours philosophique , Presses Universitaires de France, 1998

W. Windelband, A history of philosophy: the formation and development of its problems and conceptions, authorised translation by James H. Tufts, Harper & Row

 ウィンデルバンドのGeschichte der Philosophieの英訳。authorisedとあるから、ウィンデルバンドのチェックを受けているものだと思う。これは、哲学史を学ぶ人にとって標準的な教科書で、哲学史を論争史と捉えて、時代ごとのテーマ別で論じている。古代だと、「存在」「唯物論」「観念論」、中世だと「普遍論争」「個体化の問題」、啓蒙時代だと「生得観念」「自然宗教」など。こういうアプローチがラブジョイなどの仕事につながっていったのだね。いまでも必読だと思います。

『西洋哲学史』(古代・中世編、近代編)ミネルヴァ書房、1995-

 これは哲学者ごとの構成という、普通の編集の哲学史だけど、日本人が書いたもののなかでは一番好い。執筆者も多彩だし、最近の成果も盛り込まれている。

フランソワ・シャトレ編『西洋哲学の知』白水社、

哲学史のアプローチとしてはユニークで、社会の変化が思想の変化に大きな影響を与えたという立場で編集されている。個々の哲学者の解説は標準的だったり、ドゥルーズが執筆していたりさまざま。

Emile Brehier, Histoire de la philosophie, Presses Universitaires de France

 ブレイエの哲学史。一人で書いているものだけど、まあまあよいと思う。じつは二十世紀まで書かれているけれど、日本語訳は三巻、中世までしかでていない。

哲学シリーズなど

河出書房の「世界の大思想」シリーズ 1964年から刊行されたもので、第一期と第二期とに分けて出版された。新装版は一部しか復刊していないが、最近はワイド版として復刊しているものもある。全40巻。翻訳もよいものが多く、キルケゴールの「おそれとおののき」やベーコンの「ノヴム・オルガヌム」の第二部などこれでしかなかなか手にはいらないものもある。

中央公論社の「世界の名著」シリーズ 1966年から刊行されたもので、1975年から続刊が出たが、これらをまとめて改めて1980年に中公バックスで再刊された。全81巻。あまり哲学よりでない編集で、古今東西の名著が入っている。スピノザとライプニッツの巻や、ハイデガーの巻などは未だに便利。

講談社の「人類の知的遺産」シリーズ 1978年から刊行された全80巻のシリーズで、さまざまな思想家の思想と生涯、著作抜粋、現代的意義などが執筆された解説書とアンソロジーのあいのこみたいなもの。これは最近、講談社学術文庫に収録されているのもあり、文庫版では改訂がなされているのもある。トマス・アクィナス、フロイト、ウィトゲンシュタイン、ヘーゲル、カント、フッサール、ニーチェ、ベルクソンなどが文庫で出ている。

 

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